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共創審査の裏側:私たちが見ているポイント
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共創審査の裏側:私たちが見ているポイント

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EEG Editorial

Content Team

共創(=一緒につくる)って、聞こえは最高にポジティブです。 実際、うまく噛み合った共創は、単独開発では出せない速度と熱量を生みます。 一方で、共創は「いい感じの握手」で終わると、だいたい地獄を見ます。 握手のまま半年が過ぎ、気づけば議事録だけが成長している――。そんな悲劇、何度も見てきました(議事録の成長率は、いつもKPIを超えます)。 私はIT受託開発の業界で25年以上、会社を経営してきました。…

共創(=一緒につくる)って、聞こえは最高にポジティブです。
実際、うまく噛み合った共創は、単独開発では出せない速度と熱量を生みます。

一方で、共創は「いい感じの握手」で終わると、だいたい地獄を見ます。
握手のまま半年が過ぎ、気づけば議事録だけが成長している――。そんな悲劇、何度も見てきました(議事録の成長率は、いつもKPIを超えます)。

私はIT受託開発の業界で25年以上、会社を経営してきました。
そしてAIの登場で、受託開発は「作れること」より「何を作るべきか」「どう勝つか」に価値の重心が移るパラダイムシフトが起きています。

だからこそ、共創の審査も変わりました。
今回は、私たちが共創審査で重視している 5つの観点 を、できる限り具体的に公開します。
(※もちろん、相手を落とすためではなく、共創の成功確率を上げるための基準です)

共創審査は「良いアイデア選手権」ではない

最初に大事な前提を書きます。

共創審査は、
「アイデアが面白いか」よりも、「勝てる形に育つか」 を見ています。

AI時代は、アイデアの生成コストが劇的に下がりました。
つまり、アイデア自体は希少資源ではなくなった。
希少なのは、次の3つです。
• 正しい課題に当てる力
• 早く仮説検証して学習できる力
• 最後までやり切る力(これが一番レア)

では本題です。

観点1:市場規模と「伸び方」— 大きいだけでは足りない

まず見るのは、市場規模です。
ただし、単に「市場が大きい」だけでは評価しません。

私たちが見ているのは、以下です。

私たちのチェックポイント

TAM/SAM/SOMが雑に盛られていないか
(“世界で100兆円市場”は、ほぼ呪文です)
今後3年で伸びる構造があるか
規制緩和、技術変化、行動変容、業界の制度改定など
なぜ今なのか(タイミングの必然性)
AIで顧客の業務プロセスが変わるなら、その変化が追い風になるか

ありがちな落とし穴

• 「市場が大きい → 参入が容易」ではない
市場が大きいほど、強者も強いです。
• 市場規模の話だけで、顧客の顔が見えない
“誰が、どの瞬間に、なぜ困っているのか”が薄い提案は厳しい。

審査で刺さる材料

• 具体的な顧客像(役職・業務・KPI・意思決定構造)
• 既存代替(Excel/人力/既存SaaS/外注)の比較
• 「最初の勝ち筋」が1つに絞れていること

観点2:課題の痛みの強さ — “Nice to have”を避ける

共創で成功するテーマは、たいてい 痛みが強い。
もっと言うと、痛みが強い課題は、顧客がすでにお金か時間を払って解決しようとしています。

私たちのチェックポイント

顧客は今、どうやってしのいでいるか?
そこにコスト(残業・外注・機会損失)が発生しているか
導入しない理由が“無関心”ではなく“怖さ”になっているか
例:データ連携、セキュリティ、運用変更、責任範囲
無関心は、最も手強い競合です。

審査で刺さる材料

• 現場ヒアリングの一次情報(5件より“濃い2件”)
• 顧客の言葉(「ここが毎月詰む」「手戻りで死ぬ」など)
• “今すぐ”の動機(法対応、監査、コスト急増、売上機会の損失)

観点3:プロダクトの独自性 — 機能ではなく「優位性の源泉」

独自性は大事です。ただ、ここも誤解が多い。

AI時代、機能の模倣は早い。
だから私たちが見ているのは、機能の珍しさではなく、勝ち続ける理由です。

私たちのチェックポイント(優位性の源泉)

データ:データが集まる構造、学習が効く構造があるか
ワークフロー:業務に深く入り込み、スイッチングコストが生まれるか
配布網(Go-to-Market):売れる導線を持っているか(既存顧客基盤、アライアンス、業界団体など)
専門性:業界知識が“実装”に落ちているか(ルール・例外処理・監査観点)

ありがちなNG例

• 「AIを使って効率化します」だけ
→ みんな言えます。AIは今や“空気”です。
• “差別化ポイント”がUIの話で止まっている
→ UIは大事ですが、守れません。勝ち筋の説明が必要です。

審査で刺さる材料

• 競合比較表(ただし、○×表ではなく“勝てる理由”の言語化)
• 実装難所と、それを越えるための持ち札
• 代替手段に対して「顧客が戻れない」設計

観点4:チームのコミットメント — ここ、実は最重要です

正直に言うと、最後はここで決まることが多いです。

共創は、途中で必ず揉めます。
仕様、優先順位、費用、責任範囲、品質基準、納期、営業、サポート…。
揉めない共創は、たぶんまだ始まってません。

だから私たちが見るのは、継続的にコミットできる体制と覚悟です。

私たちのチェックポイント

意思決定者がチームに近い位置にいるか
“確認します”が3営業日かかると、プロダクトは育ちません
リソースの確保が“願望”ではなく“確約”か
人、予算、時間(特に時間)
リスクを一緒に背負う姿勢があるか
成功したら一緒に喜び、失敗したら一緒に学ぶ。これが共創です。

コミットが伝わるサイン

• 週次で動ける責任者がいる
• 検証のKPIが明確(例:導入社数、継続率、作業時間削減、商談化率)
• “やらないこと”が決まっている(重要)

観点5:収益モデルとスケール戦略 — 「儲かる」と「続く」は別

共創は夢で終わらせない。
ちゃんと利益が出て、継続できる形にする必要があります。

私たちのチェックポイント

誰が支払うのか(現場?部門長?経営?)
“使う人”と“払う人”が違う場合は、設計が変わります
価格の根拠(価値・代替コスト・ROI)
スケール時のボトルネック(オンボーディング、人手運用、個別対応地獄)

AI時代は特に、
「PoCはできたけど、運用が回らない」
「プロンプト職人が必要で拡大しない」
みたいな“スケールの壁”が出やすい。

審査で刺さる材料

• 単価×継続率×獲得コストのラフ試算(完璧でなくていい)
• スケールのための設計(テンプレ化、データ連携、サポート設計)
• 収益分配の考え方(共創なら、ここが曖昧だと揉めます)

審査の裏側:実際、どう進めているか

「何を見ているか」だけでなく、「どう見ているか」も少し。

私たちの共創審査は、だいたい以下の流れです。\

  1. 課題と顧客の解像度チェック(一次情報の有無)\
  2. 市場と競合環境の整理(勝ち筋の仮説)\
  3. MVPの設計(最短で学ぶ)\
  4. 体制と役割分担のすり合わせ(責任範囲を明文化)\
  5. 小さく始めて、数字で判断(感情ではなく学習で継続判断)

    ここでのポイントは、
    “完璧な計画”より“早い学習” を優先することです。

提案する側が「通りやすくなる」コツ

共創提案を出す側にとって、通りやすい型もあります。
これ、テンプレで十分です。

提案資料に入れてほしい最低限

• 誰のどんな課題か(具体)
• 現状の代替手段と、そのコスト
• ソリューションの中核(何がどう変わるか)
• 最初の検証計画(2〜6週間で何を見るか)
• 体制(誰が何時間出せるか)
• 期待する役割分担(どこまでを誰が責任持つか)
• 成功条件と撤退条件(撤退条件がある提案は強い)

撤退条件を入れると「冷たい」と思われがちですが逆です。
撤退条件がある人は、だいたい本気です。
(本気じゃない人ほど“いつか大成功する未来”に住んでいます)

最後に:共創は「相性」ではなく「設計」で勝てる

共創は運ではありません。相性ゲームでもありません。
設計できます。
• 勝てる市場の見立て
• 痛みの強い課題
• 守れる優位性
• やり切るチーム
• 回る収益とスケール

この5つが揃うほど、共創は強くなります。

もしあなたが共創を検討していて、
「うちの提案、どこが弱い?」
「MVP設計を一緒に詰めたい」
そんな状態なら、むしろ歓迎です。

共創は、完成された提案を採点する場ではなく、
勝つための仮説を一緒に磨くスタート地点だと思っています。

議事録だけが育つ未来は、ここで終わらせましょう。
育てるのは、プロダクトと市場です。議事録は…ほどほどに。

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